第93期 #12

虚言癖

またウソをついてしまった。

自分の生い立ちから今日のステータス。
その日の始まりから嘘ではじまって、誰かに嘘をつく。

自分がちっぽけな人間だということは自分が一番知っているから。
だから他人よりも秀でた特別な人間だと見せつけたいから。

そんな嘘で自分を塗りつぶしていってもう何年もたつ。

油絵の絵の具のように嘘の上に嘘を塗り上げていって、
いつだか本当の自分を自分でもよくわからないようになっていった。

嘘の上に嘘を塗りつぶしそれを繰り返し
それをかさねていくことによって。

ついた嘘が、嘘を生み出した自分にすら真実に思えてくる。

嘘がある中で関係を築いた人間とは、
その後なぜか深い関係になってゆく。

本当の自分をさらけ出せるほど大切な関係なのに
嘘のシナリオはもう消せなくなってしまう。

これからを考えて、
本当の事を言えないからいつかは離れる
という選択をいつも頭の片隅にめぐらせながら
嘘を真実として温厚に終わらせる方法を考えている。



嘘という油絵の具で塗りつぶされたきれいな絵は
作品の完成度のよさのあまり捨てることができなくなってしまった。



本当の私は、
真っ白なキャンパスに炭で下書きをしたその線なのに。

色もない
未完成の
はじまりの




私が死ぬ時にしかはじまりのキャンパスにしか戻れなくなった。



Copyright © 2010 JUDE / 編集: 短編