第6期 #8
僕は自殺はしたくない。
誰にも心配して欲しくないし、「人間の道」に反することをわざわざしたくない。
皆のことが好きだし、嫌いな部分があっても、エキセントリックになるほどのものじゃない。だから、迷惑をかけるわけにいかない。
でも、早く寿命が尽きて欲しい。
誰にもどうすることもできなく、運命のままに…。
彼は彼らしく十分に生きた。幸せだった。よくやった。いい人生だったね。と思ってほしい。
でも、そんなうまくはいかない。
僕は希望をもてるほど若くはないけれど、天からお迎えがくるには若すぎる。
そしてとても健康だ。
たぶん、今までの人生の倍以上、これから生きるのだろう。
いいかげんにしてほしい。
今、終わらせてしまうのが、一番正しいのに。
奴にはもううんざりだ。
僕はよーく知っている。奴がきてからというもの、
どんな希望も、目の前まできて、通り過ぎていく。
うまくいく計画なんて、あり得ない。
期待するところに失望が生まれる。
期待さえしなければ、謙虚に、小さく、幸せに、生きられるのか。なんて思ってもダメ。
そんな小さな期待も、やっぱりうまくはいかない。
どんどんと期待を小ぶりにしてみたけれど、いつもちゃーんと失望が待ち構えている。
しかも、失望はとても厄介なものだ。
一つの失望は、いずれ癒される。
でも、癒される前に、次の失望がおとずれると、
その二つの失望は、四つの失望分、心に穴をあける。
えっ、また?
こんどは八個分の失望をいたわってあげなくちゃいけない。
でも、頑張った。八個分の穴になんとか薄皮がはった。
もう少しで、癒される。笑ってみようかな。ニコッ。
なんて奴なんだろう。
今度は大きめの失望を落としやがった。逃げ切れなかった。
やっぱり、あの悪魔は笑顔が気に入らないんだ。
あ〜あ、今回の傷口はぐちゃぐちゃだ。
もう、わかったから、これで最後にしてくれよ。
いいや、これは期待じゃないんだよ。
奴はどんなに深い不幸の中の、とても小さな期待も、決して見逃してはくれないんだ。
きっと奴の狙いは、心にたくさん穴をあけて、無くしてしまうことなんだ。
ああ、やっとわかった!
心を無くしてしまえばいいのか。二度と笑えないように!
そんなの無理に決まってるじゃん。
君はどんなに注意を払っても、絶対に希望を持ち続ける。
そうして、失望し続けるのだ。
私の狙いは、君の心を無くしてしまうことなんかじゃないよ。
こうして、できるだけ効果的に君をいじめ続けることなんだ。