第56期 #3

美が果てる

「はい、手術は無事終了しました」
 鏡を見た瞬間は、まるで夢のようでした。子供の頃から修復不可能な顔だって言われてきたんです。他の整形外科医には「どこをいじれっちゅうねん」って言われました。ええ、関西の人で。でも、治田先生は違ったんです。最新の医療をもって、私を救ってくれたんです。
 あらそれ、私の写真?懐かしいですね。酷い顔だわ。これはいじめたくなりますね。もう不快感が、吐きそう。(笑)
 ああ、それは今の持ち主?ああ、すいません。私ったら何にも考えず・・・そうですか。その顔で生きている人が、今現在いらっしゃるんですね。その方に関しては、ええ、もう、ご愁傷様としか言えませんね。運がですね、悪かったんです。・・・悪かったのは治田先生じゃないですよね。逮捕されましたが、先生が悪人な訳ないです。そりゃ、人の顔を盗むというのは、あれですが・・・。
 だって、この顔になったとたん、もう、初めての経験ですよ。ナンパ。カッコいいお兄さんから「今、暇?」って。もう、私、初めて、女を実感しました。女を生きてて良かったって。
 先生のした手術は、安全性がまだ認められていない、ええ、ニュースで聞きました。私の顔が盗品であること、十分理解してます。夜中にこっそり付け替えられたって人のインタビュー、何回もテレビで流れてましたから。
 いや、さっきも言いましたよね?被害者は、かわいそうに、運がなかったんですって。先生はともかく、私に非はありませんでしょう?その人だって、散々ちやほやされてきたんですから、私がこれまで味わってきた思いぐらい、耐えてもらわないと、ねえ?
 アレルギー症状はないか?そういえば、さっきから顔が痒いような・・・え?どうかしましたか、私の顔が?拒絶反応?痒い・・・え、剥がれてる?ねえ、私の顔、今どうなってるの?



Copyright © 2007 草歌仙米汰 / 編集: 短編