第56期 #1

中間色

違う。

全ての何もが自分と反する方向に向かっていることに気づき深く悩んでいた。

洋服の販売員をしている彼はデザインを学んでいたが壁は厚く時を待つかのようにこの職に就いた。

突出した個性を持つスタッフの中で肩身の狭い感情を覚えていた。

来る客もいつも同じで定価の商品を見た後に必ずセールの商品群を巡り何も買わずに店内を出る。

おんなじ様な人々の動線ばかりで嫌気が差し何かを見出そうとしても考える気すら起きて来ない。

今日はある程度の売り上げを出し客寄せのために繁華街の大通りへと向かう。

楽しげに手をつないで歩くカップル、不道徳な喫煙者、虚勢を張る若者、強引に女性に詰め寄り名刺を渡そうとする愚弄者。

後はチラシを避けるような無表情で途方にくれたかのような眼差しとか。。。

同じ路上にいるだけだがこの狭いスペースだけでいつも何かが起こっていて、形成された人工的な町並みと現代に生きる人々の葛
藤模様や喜怒哀楽が展開されていた。

一時間が経過しただろう。
どことなく煮え切らない焦燥感と共にそこを後にし、また店へと帰る。

現実と妄想の間に自分の居場所はなかった。

これが現実。と、数分後、仲のよい友人が遊びに来た。

単純すぎるのかのしれない、でも嫌な事ばかりではなかったりする。

くだらないことだったが話も弾み一時が瞬く間に過ぎる。
救いの手のように思えて疲労困憊だった心身もいつしか忘れ去られていた。

そして1日が終わり床に就くと彼は深い眠りについた。
頭の中には淡く絶妙な色合いのターコイズブルーが目一杯に広がる。

中途半端だが美しかった。。。

いつまでも望んでいたが儚くもあたりにはパールの様な輝きが差し込んでいた。

朝という手が強引に体を引き寄せてまた一日が始まる。
こんな日常でも彼は些細な喜びを見つけ出そうとゆっくりと歩き出した。



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