第251期 #2

手元不如意

この春は経済がとんでもない悪い。若者は就職難。俺は若者、俺は就職難しい状態である。
バイトしながら大学院受験と公務員受験と地方自治体職員受験を並行させている。この国では、俺みたいな人がありふれているかもしれない。
バイト先はカフェバー。昼はカフェ、夜になると酒が出るという店。大きいお店、従業員多め、店長以外は大体バイト。俺は昼のバイトを担当し、夜は受験勉強に費やす。お陰で生活ができ、バイトの仲間と友達になった。
その中、気になる女の子がいる。その子も大卒で就職できず、バイトしている。でも進路については聞いてない。あえて就職しないかもしれないし、留学の準備をしているかもしれない。
でも、留学じゃないかな。ちょっと喋ったら、別に海外や大学院に進学つもりはないみたい。それじゃ公務員受験組かなと思ったら、そうでもないみたい。「やりたいことがわからないから、とにかくバイトで生活費を稼いて、あとのことをゆっくり考えたい。」とその子が自分のことをこう言っていた。
そうか。
一緒にご飯でも食べたいが、高いレストランに行くお金がない。おしゃれなパン屋で買ったマカロンをその子に渡したら、喜んでくれた。「ありがとうね」と。
月末までは、もう何も贈れない。給料日がまだ遠いのだから。来月は、日本料理でも誘おうかな、と考えている。
バイト退勤、制服を替える。ロッカーを開けたら、CDが入っていた。岡崎体育のアルバムだ。ずっとほしいもの。なんで?
その子がニコニコして現れた。「ごめんね、君のSNSを見ているよ。岡崎体育は好きよね。日本のCDなかなか買えないっしょ。」
「いやそんな、郵送とか高いやろう。」と俺はやや緊張。
「そんなことは今気にしなくていい。ところが店長になる気はないの。」その子が言った。
「確かにこの話がオーナーから来たが、やっぱ公務員試験を諦めたくないかも。」と俺が言った。
「じゃもし私がお願いしたら、店長やるの?」とその子が突然の質問。
「え?え、うん、もちろん、やります。実は…」と俺の話がまだ終わっていないとき、
その子が後ろを向いて、「パパ、彼はやると言ったよ」と喋った。
そして店のオーナーが入って、「新店舗関係の仕事をお願いしたいよ。そしてこの子もね。お前のこと好きだから。」



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