第233期 #9
「オツカレサマデシタ。」
窓から聞こえる送迎のレイエス君の声を合図に、電子レンジの扉を開ける。
「たこ焼き?」
両手に沢山のブランド物の袋をぶら下げた彼女が、ヒールを脱ぎながら、俺に尋ねる。
「5個ずつね。」
足りないと言いたげな彼女の表情を、オレンジの光がウォンウォンと照らした。
2つ目のたこ焼きを頬張りながら、彼女は明日の予定について語り出す。
「明日またクリニック。入れるの、プロテーゼ。」
こういう話をするときの彼女はテーマパークにいる子供と同じ顔をする。
「ふーん。」
興味のないフリをして、今のバージョンの彼女との思い出を振り返る。 LEDライトを胸に当てて光らす1発ギャグしか思い出せなかった。
最後のたこ焼きを頬張りながら彼女の顔を見る。
「何?」
笑った彼女のセラミックに青のりが付いているのを見て、どうせ明日の彼女も好きになるんだろうなと思い知らされた。