第217期 #6

オパール

前国王が死去した数ヵ月後だった。
前国王の死去後だから、隣国に付け入られないように気をつけないといけないにもかかわらず、国を守っていた結界が消失した。

「どういうことだ!!」
隣国から攻め込まれた時、新国王が大声を出した。自分の責務を果たしてないことを責められた気がした。
結界が消えた理由がわからなかった。そもそも結界を作っている魔法陣はどこにあるのだ?
結界についての書物は何一つ見つからない。国を守るものだから、城の中にあると思い込んでいたが見つからない。とにかく魔法陣を見つけないと、結界の修復ができない。
探し回っている間、時間ばかりが過ぎていく。

結界のおかげか、この国は一度も戦に出たことがない。つまり、訓練は受けても実践になど出たことがない兵士達にこの状況の打破は難しかった。時間とともに、状況は悪化していく。死者ばかりが増えて、前線は悲鳴を上げていた。
増援の依頼があったとき、残っているのは魔術部隊だけだった。
魔術使いを前線に送り込んでもたかが知れている。ただ死なせに行くだけだ。
それでも、魔術部隊は副長を先頭に出て行った。
「早く見つけて何とかするから」
そう言って、副長の手に握らせたのはオパールだった。

城中にないのであればと、大神殿の中を探し回っている時、後から声をかけられた。知らない男の声だった。
「誰?」
振り返るとフードで顔を隠した若い男が立っていて、その手には副長に握らせたオパールがあった。
「どういうこと?」怒りと混乱でその場から動けなかった。
「俺と契約しよ? 俺が力を貸してあげる」薄く笑った男の口元を今でも覚えている。

私は結局その若い男と契約を結んだ。
国王が死去したことで契約が切れて、結界が消失したとは思わなかった。
裏山に続く一本道の入り口にある小さな墓。その対面にある大きな木の根元、草の中に魔法陣が埋まっていた。
私と男の血を入れた葡萄酒を魔法陣の上に注ぐ。強い風が吹いて、漂っていた血の匂いが消えた。
彼は私にオパールを差し出した。
「多くの死者を出したのはキミのせい。キミが結界の契約者を殺して、結界の保護をしなかったから」
もっと精進したほうがいいよ、と彼はオパールを私に押し付けて、山の中に消えていった。
戦が終わったのはその翌日だった。

あのオパールは玄関に置いてある。戒めだった。
幸福も安楽も、決して勝手にやってくるものではない。誰かが誰かのために作り、守っているのだ。



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