第165期 #1

人形

 この世界で暮らしている私以外の人はみな、機械じかけの人形だ。

 毎日同じことをやり、言われたことだけをし、命令されたことしかできない。
 繰り返し繰り返し同じことをする。
 朝起きて、朝食をとり、仕事に行く。

 「あぁ、おはようございます」

 同じ人に会い、同じ挨拶をする。
 生きるためのことをする。
 お昼を食べる。

 「こんにちはー」

 同じ人に会い、同じ挨拶をする。
 家に帰る。

 「ただいま」

 誰もいない部屋に向かって声をかける。もちろん、何も返ってはこない。

 「おかえり」

 自分で自分の言葉に返す。
 風呂に入り、夕食を摂る。
 少しの間、散歩に行く。

 「今晩は」

 前夜と同じ人に会い、同じ挨拶をする。

 「おやすみなさい」

 今日という日に挨拶をし、一日が終わる。
 そんな毎日。
 あきるほど同じことを繰り返しても、日々は変わることはないし、終わることもない。
 私はまだいい。私は機械ではないから。決められたことをしなくてもいいから。私は、自由。


 でも、私以外の人形達はいったい誰が造ったのだろう?
 誰が命令を与えているのだろう?

 ――――――あれ、私は、周りが人形だらけなのにどうやって生まれたのだろう?


 おかしい。なにが?どうして?

 どういうこと?


 歯車がだんだんとずれていく。

 どうなっている?私は?人形?なにが?どれが?

 なにもかもがわからない。
 嫌だ、私は。

 私は、何なのだろう?

 この世界で暮らしている、私以外の人はみな、機械じかけの人形だ。

 なぜこんなことを思ったのだろう?
 私は、私は、私は―――――――。





 ナニ?



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