第164期 #12

告白

私、ときどき思うのです。私あなたと一緒なら死ねるわ。あなたといてこれほど安心することはないの。
例えば今日行った街でちょうど事故がありましたね。通る予定だった場所です。私達、運よく巻き込まれることはなかった。救急車、パトカー、ヘリも何機か飛んでいましたね。事の重大さがよくわからなくてあの時はあまり考えませんでしたけど、数人が巻き込まれる事故だったそうですね。後で知りました。

あなたに彼女がいるって、なんとなく予想はしてた。けれど今日あなたと一緒に歩いていて、ああ、結婚するならばこの人がいい、と思ってしまったのです。きっと楽しいでしょう。だってあなたとはずっと仲良しだったんですもの。趣味も合っていたし、性格も、あなたはいい人ですもの。

でも、でも、そんな顔で恋人のこと言われたら、私の入る隙間なんてどこにもなくて。
人のもの奪えるほどの力も私、持ってない。
それに、あなたには、幸せになってほしいの。

あなたにはたくさん助けられた。付き合ってすらいないのに、あなたにたくさん迷惑をかけた。
だから私からも恩返しがしたかった。
けれどきっと私ではあなたを幸せにはできないのでしょう。
強欲よね。
ばかみたい。だって私振られてるのに。なのに私それからもあなたとずっと友達でいる。本当ならすっぱりと付き合いをやめるのでしょうに。本当、ばかみたい。

だから私、あなたとあの時、一緒に事故に巻き込まれたかった。二人でこれからどこへ行こうか案内するよ、なんて話しながら、背後から来た暴走車にはねられたかった。倒れた二人の血が混じり合って、歩道のタイルを赤く塗らせて。それはそれはきれいな景色でしょう。私が今日着ていた花柄のスカートも、きれいな赤に染まるでしょう。

けれどそれはきっと、望むのはきっと私だけでしょう。あなたは優しい人だから、あなたを好きなたくさんの人が悲しむでしょう。

不思議です。今日はとても楽しかったのに、今とても悲しい。雨が降っているからでしょうか。昼間は晴れていたのに。
ごめんなさい、私、あなたのことがずっと好きだったみたい。諦めきれてないみたい。
ありがとう、迎えにきてくれて。たくさんいろんな場所に連れていってくれて。相談にのってくれて、助けてくれてありがとう。
ありがとうね。きっと幸せになってね。あなたが幸せでありますように。

私のことは、どうか忘れて。



Copyright © 2016 須田ミヨ / 編集: 短編