第137期 #1
私の夢は「究極の愛」を手に入れる事。その為なら手段を選びません……
ある時、素敵な方と親しくなり、私は直ぐに恋に落ちました。彼の事を想うと胸が焦がれ、これが「究極の愛」と知りました。
何時しか「彼を自分のものにしたい」そう考える様になり、色々な事を調べると、「向こうの世界は、霊同士が融合して一つになって、究極の一心同体になる世界。愛する人と本当に身も心も一つになる本当の愛の世界」そう判りました。
あの世に行けば究極の愛が手に入る……何と素敵な事なのでしょうか、絶対に手に入れたいと強く思いました――迷い無く、私の心は決まりました。
そして私はある薬を手に入れました――そう究極の愛を手にいれられる薬です。私は早く次のデートの日が来ないかと心待ちするようになりました。きっと彼もそれを望んでいるはずです。優しい彼も私と同じ考えだと想うのです。
次の休日、彼がやって来ました。こんなに心が弾む事はありません。私は嬉しさに彼に抱きつきます。そして挨拶代わりの熱い口づけを交わします。
ひとしきり愛し合った後私は彼に何か呑むか尋ねます。
「そうだな、コーラがいいな」
「今持って来ますね」
グラスに氷とコーラを入れ、そして「愛の薬」を入れます。無味無臭なのでコーラの味が変わる事はありません。
続いて私の分も同じ様にします。後は実行あるのみです。いよいよ私の人生の夢が叶う瞬間が来るのです。
「お待ちどう様」
そう言って、彼にグラスを差し出すと彼はそれを受け取って喉を慣らしながら飲干します。苦しむ間もありませんでした。それを見て、私も飲み干します。程なく私の視界も暗くなって来ました。いよいよ私も永遠の愛の世界に旅立てるのです……
…………朝の光に目が覚めると、隣では彼が寝ていた……夢だったのか、向こうの世界は永遠の愛の世界なのかと想う。
昨夜は、彼の浮気の詫びを長々と聴いていた。もう何回目だろうか、もう沢山だ……夢の事を考えた……
昨日、公園で掴まえて来た雀蜂を使おう……彼の腕を、手を虫カゴの中に入れる。虫カゴの雀蜂は早速侵入して来た彼の手を刺した。雀蜂を逃して窓をしめる。
後は彼がアナフィラキシー ショックを起こすのを見ていれば良い。 死ななくても良い、他の女を愛せなくなれば……
苦しみ出した彼を置いて、携帯の番号を消去する……私の夢はいつ叶うのだろう……