仮掲示板

190期 全感想

今月の初め、西日本で豪雨災害が発生してしまいましたが、皆さん大丈夫だったでしょうか?(台風もまたやってきていますが)
被害を受けた地域がかなり広範囲だったようなので、どうだったのだろうと少し気になりました。


#1 スイカ

冒頭で「大人になって、スイカが食べられなくなった」と提示しているのに、結局その理由が最後まで語られないまま終わっているので、いったい何だったのだろうという気分になる。
基本的には子どもの頃の思い出の風景のようなものを語っているだけで、ちょっと小説とは違うもののように思える。
そして最後は、キレイに話をまとめすぎている気がする。


#2 いっそ嫌いになりたかった

最初の2行は曲の歌詞とか詩で、そこから連想した物語をその後に書いたということだろうか?
内容については、好意を持っている相手の好きなものが気になるという、よくある恋愛感情を描いたもの。ただ最後の方で、好意を持っていた相手のデスクが汚くて掃除するという部分には、作者のオリジナリティが少し感じられる気がする。


#3 感情泥棒

いまどき(ゆとり世代?)の若者を代表するような部下をめぐる話か。ゴルフのエピソードは情景が浮かぶようで面白かったし、「感情泥棒」に至るまでの細かい観察や考察にも、主人公の苛立ちが上手く表現されていると思った。
しかし、自分とは違う思考や行動を持つ若者に対する考え方が少し一方的な気がする。これでは自分の考えをただ書いただけで終わってしまい、物語としての広がりがなくなってしまうのではないだろうか。


#4 夏の夢

(予選の感想と同じです)
とても丁寧に書かれた文章で、それはいいと思うのだけど、表現に文学臭が漂っていて、それが少し鼻に付く。なぜ文学臭が悪いのかというと、その書き方は本当にその人の表現なのかなと思ってしまうからだ。この作品の場合は、半分はオリジナルで、もう半分は何かの文学的な表現のイメージを借りてきているように感じる。
内容については、夢の中に出てくるようなとりとめのない出来事に過ぎないのだが(実際に夢というオチだったが)、そのフワフワとした感覚がよく表現されていると思う。ただし、少女の意味ありげな言葉(「あなたのお嫁さんなんだよ」と「あなたが子供の頃に会っておきたかった」)だけを残して、そのまま放り投げてしまった感じがして、いったい何だったのだろうと首をかしげたくなった。


#5 雨ニモマケヌ

(予選の感想と同じです)
前半はひたすら死について書き、後半は生について書くという構成。世の中には死があふれているが、それと同じぐらい生もあふれていて、その死と生という、どうにもならないものをいつも受け取りながら自分は存在しているといったことを書きたかったのだろうか。
書き方は少し雑だし、まだまだ工夫する余地が残されている気もするが、じわじわと伝わってくるものはあるなと思う。死や生のようなどうにもならないものがあるからこそ、小説を書く必要が出てくるのだろう。


#6 大富豪の家政婦

後半部分は、話がどんどん飛躍してハッとさせられるものがあるが、前半は退屈だし、後半の展開に対して何か意味のあることが語られているようにも思えない。前半のモタモタを後半で挽回しようとして、全体的にまとまりがなくなってしまったという印象。


#7 スピーチの草案

結婚式のスピーチをそのまま小説にするというアイデアはいいと思うし、その中でスピーチをする本人が自分の恋愛観を語るというのも、異様な感じがして面白い。しかし、そのアイデアの中だけで話がまとめられていて、それ以上のものが無いような気がする。


#8 繋がれた男

(予選の感想と同じです)
復讐心というものは、どうやったら満たされるのかや、そもそも満たされることがあるのかといった問題提起がなされている点はいいと思う。しかし主人公も、復讐を受ける囚人の側も、どちらもただ復讐や狂気の泥沼でもがいているだけであり、物語が閉じていくだけという印象しか持てない。問題の解決策を見つけるというところまでは行かなくても、何か突き抜けていくものが欲しい。

190期#7『スピーチの草案』の感想を書き直します

以前書いた感想では、『スピーチの草案』というタイトルを考慮せずに書いていました。
つまり「草案」なのだから、まだスピーチをしていないということなのですが、私の中では、実際のスピーチをそのまま文章にしたという体の作品だと思っていたということです。そしてこの文章を、「草案」なのだということを前提にして読むと、「実際のスピーチ」という体のものとは違う趣になってしまいます。
この文章が「実際のスピーチ」ならば、ただの変人を描いただけに終わってしまいますが、「草案」であるなら、恋愛が上手く出来ない人間の切なさが滲んでくるような気がします。
ただし「草案」であるにしても(自分の中だけの思いだとしても)、最後の方で、自分を卑下して、内に籠ろうとしているようなところがあって、そこはあまり好きになれませんでしたが。

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